2016年1月13日~

産業廃棄物処理業者ダイコーらによる壱番屋廃棄カツ横流し -廃棄されるべき食品がそのまま市場に


概要

分野 廃棄物処理法違反, 食品衛生法違反, 詐欺
発覚日 2016年1月13日
場所 愛知県, 岐阜県
関係者 壱番屋, ダイコー, みのりフーズ, ジャパン総研
目次 [表示 / 非表示]

CoCo壱番屋を展開する壱番屋が廃棄処理を依頼した冷凍ビーフカツが、産廃業者、食品販売会社等を通じて市場に流通していたことが発覚しました。
その後の捜査によって、複数メーカーの廃棄食品が不正転売されていたこともわかりました。

用語解説

株式会社壱番屋

カレーハウスCoCo壱番屋を日本並びに世界に展開するカレー専門店。
今回、異物混入により廃棄処理したはずの冷凍ビーフカツ等が転売され、市場に流通していたことが発覚しました。

ダイコー株式会社

愛知県稲沢市の産業廃棄物処理業者。今回、会長の大西一幸容疑者が、壱番屋から廃棄依頼された冷凍ビーフカツを処理したと偽ってそのまま外部に転売していることがわかりました。

みのりフーズ

岐阜県羽島市の製麺業者。こちらの(実質的)経営者岡田正男容疑者がジャパン総研木村容疑者と共に、廃棄食品の不正転売に関わっていたことがわかりました。
事件発覚後、「違法性があるとは全然思っていない。タダでもらって売ったのならともかく」と発言するも、彼の逮捕を持ってその法的解釈は誤りであることが明らかになりました[1]

ジャパン総研株式会社

愛知県名古屋市の食品販売会社。こちらの元幹部木村正敏容疑者がみのりフーズ岡田容疑者と共に不正転売に関わります。

廃棄食品

本来であれば一般に流通せず、処理されるべき食品。
今回、国民の「食の安全」を守るために、多くの食品が食卓に上がることなく廃棄されているという現実を突きつけられました。それがほんの総量8mm程度のプラスチック片であったとしてもです。

前段

2010年3月廃棄処理委託

株式会社壱番屋がダイコー株式会社に食品廃棄・社員食堂の残飯処理を委託

株式会社壱番屋(以後壱番屋)は、産業廃棄物に当たる廃棄食品の処理と、一般廃棄物に当たる社員食堂から出る残飯処理をダイコー株式会社(以後ダイコー)依頼しました[2]。しかし、ダイコーは一般廃棄物処理の資格を有してはいませんでした。

事件の沿革

2015年10月19日廃棄依頼

壱番屋がダイコーに冷凍ビーフカツ廃棄を依頼

壱番屋は、製造過程でプラスチック片混入の可能性があるため、ダイコーへ冷凍ビーフカツ40,609枚の廃棄処理を依頼しました[3]。ダイコーはこれを「全て堆肥化した」と報告して廃棄委託料約28万円を受け取りました。
2015年10月~12月不正転売

ダイコーがみのりフーズに廃棄食品を売却

ダイコーは壱番屋から廃棄委託された冷凍ビーフカツ36,450枚をみのりフーズに109万3,500円で売却しました[4]
一般流通経路

みのりフーズからジャパン総研、食品卸売業者へ

みのりフーズの岡田正男容疑者はジャパン総研株式会社(以後ジャパン総研)の木村正敏容疑者と共に、冷凍ビーフカツに「みのりフーズ OM」のラベルを貼り別の箱に詰め替えて、東海3県と静岡県の食品卸売業者、スーパー、弁当店など118の業者に販売しました[5]
2016年1月13日不正転売発覚

廃棄した冷凍ビーフカツの一般流通が発覚

壱番屋系列店勤務のパート従業員が買い物中に、本来は店頭に並ばないはずの壱番屋製冷凍ビーフカツを発見し、本社に報告したことでダイコーによる不正転売が発覚しました[6]
2016年1月15日更なる不正転売

冷凍ビーフカツ以外の廃棄製品の不正転売が発覚

壱番屋は、先に発表した冷凍ビーフカツ以外にも、冷凍チキンカツ冷凍ロースカツ冷凍メンチカツナポリタンソースラーメンスープがダイコーによって不正に転売されていたことを発表しました[7]

発覚のその後

2016年1月19日再発防止策発表

壱番屋は廃棄食品の不正転売問題を受けて再発防止策を発表

壱番屋はこの問題に対し、これまでの対策に加えて食品廃棄物の排出について以下の措置を講じると発表しました[8]

  • 製品の廃棄時には包材(パッケージ)から取り出して、堆肥原料に混ぜ込む
  • 製品のまま廃棄する際は、社員が立ち会い確実に処理されたことを目視確認
  • 産業廃棄物処理業者の選定を慎重に行い(ダイコーとは取引停止済み)、取引後の処理状況の確認も徹底検討
2016年1月19日余罪発覚

みのりフーズの冷凍庫から108品目の廃棄食品が保管

みのりフーズの冷凍庫から、ダイコーから仕入れた壱番屋以外の廃棄食品108品目(ニチレイフーズ、マルコメ、ローソン、セブン-イレブン、イオンなど)が見つかり、岡田容疑者は自身で食べる他転売していたことを認めました[9][10][11]
2016年2月16日全国立入調査

環境省は同様事案の報告が無かったことを発表

環境省は本件を受けて、直ちに産業廃棄物処理業者等への立入調査を実施した結果、同様の事案の報告が無かったことを発表しました[12]
2016年2月29日廃棄食品撤去

愛知県はダイコー保管の廃棄食品を撤去命令

愛知県は、休業状態にあるダイコー保管の腐敗しつつある廃棄食品の早期撤去を求めるとともに、廃棄委託した各食品メーカーへの自主回収を促しました[13]
2016年3月7日除名処分

愛知県産業廃棄物協会がダイコーを除名処分

愛知県産業廃棄物協会は臨時総会を開き、「協会の名誉を毀損し、業界の信頼を失墜させた」などとして、ダイコーの除名処分を決定しました[14]
2016年3月10日事業登録取り消し

環境省と農水省はダイコーの事業者登録取り消しを決定

環境省と農林水産省は以下の理由でダイコーの登録再生利用事業者を取り消しました[15]

  • 廃棄食品放置などの登録基準への不適合
  • 肥料化施設の故障放置
2016年3月14日環境省再発防止

環境省が食品廃棄物の不適正な転売事案に対する再発防止策を発表

環境省は本件を受けて、再発防止策を発表しました[16]こちらに詳細)。
2016年3月14日倒産

ダイコーが事実上の倒産

東京商工リサーチ名古屋支社はダイコーが2回目の不渡りを出し、銀行取引停止処分(事実上の倒産)になったこと明らかにしました[17]
2016年4月9日無資格廃棄

ダイコーが壱番屋社員食堂の残飯処理を無資格で請負ったことが判明

壱番屋は産業廃棄物の他に、一般廃棄物に当たる社員食堂から出る残飯の処理もダイコーに委託していましたが、ダイコーは一般廃棄物処理の資格を持っていないことがわかりました[2][18]

ダイコーは「残飯処理も可能」と説明していましたが、壱番屋は資格を確認していませんでした。

2016年4月18日収集運搬許可取り消し

三重県と岐阜県がダイコーの産廃収集運搬業許可取り消しを決定

三重県と岐阜県は、両県にある無届けの倉庫が廃棄物処理法違反にあたるとして、ダイコーの産業廃棄物収集運搬業許可を取り消しました[19]
2016年6月8日廃棄食品撤去

愛知県がダイコー保管の排出先不明の廃棄食品を撤去

愛知県は事実上倒産したダイコーが保管する排出元不明な廃棄食品について、約4000万円を費やして処分しました[20]

この処理作業には本来約2億1400万円の費用が必要でしたが、協力機関による無償協力がありました。

2016年6月27日産廃許可取り消し

愛知県がダイコーの産廃処理業許可取り消しを決定

愛知県は、2006年ごろから無許可で堆肥化以外の別の処理をしており、これが廃棄物処理法違反にあたるとして、ダイコーの産業廃棄物処理業、収集運搬業の許可を取り消しました[21]
2016年7月12日逮捕

大西一幸容疑者、岡田正男容疑者、木村正敏容疑者を逮捕

愛知、岐阜両県警はダイコー会長大西一幸容疑者を食品衛生法違反(無許可販売)の疑いで、みのりフーズの実質的経営者岡田正男容疑者を食品衛生法違反(無許可販売)詐欺容疑で、ジャパン総研元幹部の木村正敏容疑者を詐欺容疑で逮捕しました[3][22]。両県警は翌13日、3人を送検しました。
2016年8月1日再逮捕

大西一幸容疑者、岡田正男容疑者、木村正敏容疑者を詐欺罪等で再逮捕

愛知、岐阜両県警は、大西一幸容疑者を詐欺廃棄物処理法違反の疑いで、岡田正男容疑者を詐欺幇助、木村正敏容疑者を詐欺容疑で再逮捕しました[23][24]
大西、岡田両容疑者は容疑を認めましたが、木村容疑者は「廃棄物とは知らなかった」と容疑を否認しました。
2016年12月16日判決

ダイコー大西一幸被告に懲役3年、執行猶予4年、罰金100万円

名古屋地裁は、詐欺・食品衛生法違反の罪で、ダイコー会長大西一幸被告に対し、懲役3年、執行猶予4年、罰金100万円(求刑懲役3年6月、罰金100万円)の判決を下しました[25]
2016年12月20日判決

みのりフーズ岡田正男被告に懲役2年6月、執行猶予3年、罰金50万円

名古屋地裁は、詐欺・食品衛生法違反の罪で、みのりフーズ元実質的経営者岡田正男被告に対し、懲役2年6月、執行猶予3年、罰金50万円(求刑懲役2年10月、罰金50万円)の判決を下しました[26]
2017年1月27日判決

ジャパン総研木村正敏被告に懲役2年6月、執行猶予3年

名古屋地裁は、詐欺罪で、ジャパン総研元幹部岡田正男被告に対し、懲役2年6月、執行猶予3年(求刑懲役3年2月)の判決を下しました[27]

要点まとめ

  • ダイコーらは5年以上前から、「破格の安値」で全国の食品メーカーと契約し、集められた廃棄食品を不正転売していました[28]
  • 本件は、国や地方自治体による監査ではなく、壱番屋のパート従業員が偶然的に発見したことによって発覚しました。
  • ダイコーが保管(既に腐敗も)していた廃棄食品は、委託したメーカーが自主回収し、残りは県と協力会社によって処分されました。
  • 壱番屋は改めてダイコー側に対して損害賠償を求める提訴を検討しています[29]
  • 環境省は農林水産省とも協力して、再発防止策を発表しました。
  • 日本の食品廃棄物等の総量は年間約2800万t(うち事業系が1916万t)で、このうち本来食べられるにもかかわらず捨てられている、いわゆる「食品ロス」は約642万t(うち事業系が331万t)[16]

再発防止策

環境省は、本来適切に廃棄処理されるはずの食品が、不正に転売されていたことを受け、食品廃棄物の処理について以下のような再発防止策を発表しました。

電子マニフェストの機能強化

  • 電子マニフェストの虚偽記載防止のため、記載内容に不自然な点があった場合に、不正を検知できる情報処理システムの導入を検討。
  • また、排出事業者において、委託契約に沿った廃棄物の適正処理の実施状況を具体的に把握するため、例えば、 廃棄物処理業者が実際行った処分方法を記載事項に追加する等、必要な措置を検討。

廃棄物処理業者に係る対策:透明性と信頼性の強化

(監視体制の強化)
  • 都道府県に対して、産業廃棄物処理業者への抜き打ちの立入検査など、監視強化の取組について改めて通知。 併せて、食品廃棄物の不正転売に係る立入検査マニュアルの策定を検討
  • 地方公共団体と連携しつつ、食品リサイクル法の登録審査及び登録事業者に対する国の指導監督を強化(※)
(適正処理の強化と人材育成)
  • 不正転売の未然防止に向けた一層の取組強化を廃棄物処理事業者に求め、環境省としてその取組状況をフォローアップ
    • 処理状況の積極的な公開
      排出事業者による現地確認の積極的受入れとその際に参考となるチェックリストの整備処理量等の処理状況に関する情報のインターネットを通じた積極的な情報公開
    • 優良事業者の育成・拡大
      廃棄物処理法に基づく優良産業廃棄物事業者認定(注)の取得の推進
      優良な食品リサイクル業者育成・評価のための自主基準の策定や評価制度の構築
      廃棄食品の処理業者に対する研修の実施や民間資格制度の創設
      (注)通常の許可基準よりも厳しい基準をクリアした産廃処理業者を認定する制度

排出事業者に係る対策:食品廃棄物の転売防止対策の強化

  • 排出事業者責任の徹底のため、排出事業者を対象として廃棄物処理法令で規定されている、同責任に基づく必要な措置(処理状況の確認や適正な処理料金による委託等)についてチェックリストを作成し、当該措置の適正な実施について、都道府県に通知し、関係事業者への指導に当たり、その活用を推進。
  • 食品関連事業者に対して、食品ロスの削減を要請するとともに、やむを得ず食品を廃棄する場合には、そのまま商品として転売することが困難となるよう適切な措置を講じることを要請(併せて、廃棄食品の処理について適正な料金で委託することも改めて要請)。(※)
  • 食品廃棄物をそのまま商品として販売することが困難となるよう適切な措置を講じる等、食品リサイクル法における食品関連事業者が取り組むべき措置の指針(判断基準省令)の見直しを検討(※判断基準を勘案して指導・助言を実施) (※)
  • 食品廃棄物の不正転売防止のための措置に関するガイドラインの策定(※)

※食品リサイクル法に基づく取組について、農林水産省等と共同の取組は(※)を付記。


編集後記

2016年1月に発覚した、壱番屋の廃棄食品が不正に転売されたいた事件を、一通り関係者の裁判が終わったことを受けてまとめました。
まず驚いたのが、本件の発覚が偶然的なものであり、数年間全く気づかれることなく続けられていたことです。脚注にもありますが、工場を規模拡大することなく「破格の安値」で廃棄委託処理を請け負っている段階で、何らかの「怪しさ」に気づくことが出来なかったのでしょうか。
その後、環境省は再発防止策を発表しましたが、こちらが無事機能することを期待します。

脚注


引用

コメント

あなたのメールアドレスは公開されません。