2015年5月28日~

化学及血清療法研究所による血液製剤の不正製造及び隠蔽工作問題 -薬害エイズ訴訟で被告となった化血研に発覚した新たな不祥事


概要

分野 医薬品医療機器法違反
関係者 化学及血清療法研究所, 厚生労働省
日付 2015年5月28日~
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一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)が血液製剤(血漿分画製剤)を国の承認書と異なる方法で40年に渡って製造し、さらに組織ぐるみで隠蔽工作を行っていた問題。
その後血液製剤以外にも不正製造が確認され、今現在も化血研自体の解体・事業譲渡が進められています。

用語解説

化学及血清療法研究所(化血研)

人体用・動物用ワクチン、血漿分画製剤等の研究・開発・製造・供給までを手がける製薬メーカー[1]
過去、薬害エイズ事件で被告企業として提訴され、その後和解が成立しています。

厚生労働省

国の行政機関である「省」の一つ。健康・医療、子ども・子育て、福祉・介護、雇用・労働、年金に関する政策分野を主に所管します[2]
今回、化血研から40年に渡って欺かれていたことが判明しました。

血漿分画製剤

ヒトの血液から製造される血液製剤の1種で、血液中の血漿成分から製造される医薬品[3]
化血研の国内シェアは第2位でしたが、そのすべてが不正製造によるものでした。

ワクチン

病原体の感染または発症を予防するために、免疫をつくらせる目的で使用する医薬品[4]
化血研では、人体用・動物用のワクチンを製造していましたが、これらも不正な方法でした。

紫外線ランプ

紫外線(波長が10-400 nm、即ち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波)を照射する照明装置で、日常生活ではブラックライトや害虫駆除として活用されています[5]
化血研では主に偽造書類の経年劣化を促進するために活用されており、隠蔽工作における功労者といえます。

信頼回復

諸事情により失われた信頼を取り戻し、元の関係性に立ち返るべく行われる試み。
尚、残念ながら今回出番はありませんでした。

事件の沿革

1970年代不正開始

不正製造の開始

血漿分画製剤の不正製造は、最も早いものは遅くとも1974年頃から始まりました。
1980年代~1990年代前半不正増加
不正製造は、薬害エイズ事件が起きた1980年代から1990年代前半にかけて急増しました[6][7]
2015年5月28日以前発覚のきっかけ
化血研内で血漿分画製剤製造の問題解消を試みる動きがあり、後の内部告発に繋がります[8]
2015年5月28日~29日不正発覚

医薬品医療機器総合機構の立入調査により、血漿分画製剤の不正製造が発覚

厚生労働省に届いた内部告発の手紙を契機に行われた医薬品医療機器総合機構の立ち入り調査の結果、化血研で製造している国内献血由来のすべての血漿分画製剤において、国が承認した製造方法とは異なる方法で40年に渡って製造されていたことが判明しました[8][6]

発覚のその後

2015年6月1日~4日関係者協議

化血研と厚生労働省との協議

化血研は厚生労働省との協議により、

  • 血漿分画製剤12製品26品目[9]について出荷を差し止め
  • 製剤製造方法についての承認申請等の必要な対応

を実施することを決定しました。ただし、化血研の製造する血液製剤の内、代替製品が存在しない又は切り替えることで患者の生命に影響を及ぼす一部の製品・品目については、安全性を確認した上で例外的に出荷することが認められました[8]

2015年6月5日対応発表

国内献血由来の血漿分画製剤の出荷自粛を通知

化血研は厚生労働省との協議の結果、国内献血由来の血漿分画製剤について出荷を(代替が効かない製品を除いて)自粛する旨を報道機関に通知しました[8][9]
2015年9月18日新たな不正発覚

厚生労働省の立入検査により、ワクチン製剤の不正製造が判明

厚生労働省は化血研が製造販売するワクチン製剤等26製品についての調査を開始し、本件立入検査の結果、不正製造が確認されたため、出荷の自粛を要請しました[7]
2015年12月2日社内処分

全役員の処分と再発防止策を発表

内部調査及び第三者委員会による調査結果を踏まえ、

  • 常務会メンバーの新体制方針
  • 役員全員の処分
  • 役員全員による報酬額カット

等の処分、再発防止策を発表しました[10]

2015年12月9日新たな不正発覚

農林水産省の立入検査の結果、動物用ワクチン製剤の不正製造が発覚

農林水産省の立入調査の結果、化血研の製造販売する動物用ワクチン製剤、診断薬等29種類の不正製造を確認しました[11]

記事に2015年2月に不正製造についての報告を化血研から受けているとありますが、なぜ立入調査までに10ヶ月の期間を要したのかは不明です。

2016年1月8日行政処分

110日間の業務停止命令

厚生労働省は、化血研に対してこれまでで過去最長となる110日間(2016年1月18日~5月6日)の第一種医薬品製造販売業及び医薬品製造業を対象とする業務停止処分を出しました[8][12]
2016年1月19日行政処分

30日間の業務停止命令

農林水産省は、化血研に対して30日間(2016年1月26日~2月24日)の(代替が効かない10製品を除いて)動物用医薬品を製造・販売停止の対象とする業務停止命令を出しました[13][14]
2016年2月問題解消報告

医薬品医療機器総合機構に問題解消を報告

化血研は、これまでの製造不正についての問題を解消したことを医薬品医療機器総合機構に報告しました[15]
2016年9月新たな不正発覚(?)

日本脳炎ワクチンの製造不正が発覚

化血研の製造販売する日本脳炎ワクチンについて、厚生労働省は同年8月に不正製造が判明し、9月の立入調査によって確認しました[15]
ただし、本件について化血研は事前に厚生労働省に報告しており、立入調査によって発覚したという報道を否定しています[16]
2016年10月4日行政処分

厚生労働省による報告命令・弁明通知書の提示

厚生労働省は化血研に対し、原因究明と製造販売する全品目を再調査するよう行政処分を行いました。また、厚生労働省は化血研に対し、医薬品製造販売業許可の取り消し処分の可能性を伝えました[15]
2016年10月18日対応報告

日本脳炎ワクチンの製造法に問題無いことを報告

化血研は、10月4日に行われた行政処分に対して、日本脳炎ワクチンは承認通りに製造されておあり、問題無いことを報告しました[17]
2016年10月19日事業再編

アステラス製薬への事業譲渡交渉は決裂

厚生労働省は化血研を解体し、事業を他社に譲渡することを促してきましたが、化血研の独立志向が強く、事業譲渡協議を進めていたアステラス製薬との交渉は決裂しました[18][19]

不正の原因

本件不正製造が行われていた原因として、第三者委員会からは以下のように報告されました[7]

  • 主に血友病患者に対して非加熱製剤を使用したことにより発生した薬害エイズ事件が発端となり、血漿分画製剤についての国産の加熱製剤への早急な製品化・安定供給を最優先化する必要があった(製造法を変更するには新たに時間をかけて国からの承認を取る必要があった)。
  • 薬事法令の規制が現在と比べて厳格ではなかったため、法令違反を軽視していた。
  • 化血研の閉鎖性、独善性により、監査機関とのコミュニケーションを欠いていた。
  • 化血研全体が徹底した隠蔽工作を行うことで、監査による不正発覚を免れていた。

隠蔽工作

製造記録の偽造

国による査察に備えて、承認通りの製造記録を作成していました。

出納記録の改ざん

今回、主に製造過程で「ヘパリン」を添加していましたが、その購入が露見しないように出納記録のデータを改ざんしていました。
これらの偽造・改ざんされた記録は過去に遡って作成され、紫外線ライトをあてることで変色させて、古く見せかける徹底した隠蔽工作が行われていました[6]

編集後記

本件は内部告発によって初めて露呈したわけですが、それが無ければまだまだ気づかれずに続いていたのかもしれません。使用した患者からの被害報告が無かったからと言って済ませることが出来る事案ではありませんし。役員が総入れ替えとなっても、継続して不正製造が発覚したというのは、そっくりそのままの製造ラインを事業譲渡してもまた同じことの繰り返しになってしまうのでは無いかと不安にもなります。
また、いくら出納記録を偽造していたとしても、本来不要なはずの薬剤を納品していた業者さんは疑問に思わなかったですかね。

脚注


引用

コメント

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