2013年5月~

甘利明事務所によるUR都市機構補償問題口利き疑惑 -TPP交渉合意の立役者に一体何が?


概要

甘利明TPP担当大臣(当時)と地元事務所に対して1200万円の利益供与を伴う口利き疑惑が週刊文春にて当事者により告発されました。
結果的に全員不起訴となりましたが、告発者の用意周到さから逆に甘利氏は嵌められたのではないかという別の疑惑まで持ち上がりました。

分野あっせん利得処罰法違反疑惑, 政治資金規正法違反疑惑
関係者甘利明, 一色武, 清島健一, 鈴木陵允, UR都市機構
日付2013年5月~
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用語解説

甘利明

自由民主党所属の衆議院議員。TPP担当担当大臣として大筋合意にまでこぎつけた苦労人[1]
今回、薩摩興業とUR都市機構との補償交渉への金銭供与を伴う口利き疑惑が持ち上がりました。

一色武

薩摩興業の総務担当者で、甘利氏の支援者。父親の甘利正氏とも面識あり。元右翼団体構成員。
UR都市機構との間に生じた補償問題を解決するために甘利氏と事務所を頼りますが、最終的にはこれまでの利益供与を含む過程を全て週刊文春に告発しました。リスクを避けるため、常にメモや録音で証拠を残すことを心がけています。

清島健一

甘利氏の公設第一秘書・大和事務所(甘利氏の地元の事務所)所長。
今回、UR都市機構との補償交渉に応じますが、薩摩興業から受け取った現金300万円を着服した疑いが持たれています。

鈴木陵允

甘利氏の政策秘書。
清島氏と共に補償交渉を担いつつ、薩摩興業から過剰な接待を受けていました。トヨタレクサスも欲しがりました。

薩摩興業

千葉県にある建設業者。
UR都市機構との補償問題が起こり、甘利氏事務所を頼りにします。

UR都市機構

正式名称は独立行政法人都市再生機構。大都市や地方中心都市における市街地の整備改善や賃貸住宅の供給支援、UR賃貸住宅(旧公団住宅)の管理を主な目的とした、国土交通省所管の中期目標管理法人である独立行政法人[2]
薩摩興業との間に工事施工や産業廃棄物処理で補償問題を起こします。
また、こちらの職員も一色氏から接待を受けていました。

あっせん利得処罰法

正式名称は「公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律」。政治家(国会議員,地方議会議員,地方自治体の首長など)や公設秘書らが公務員に口利きをして報酬を得ることを禁じた法律[3]

政治資金規正法

政治団体の届け出、政治資金の収支の公開および授受の規正などを定めることによって、政党その他の政治団体や公職の候補者の政治活動の公明と公正を確保することを目的とする法律[4]

とらやの羊羹

室町時代から続く和菓子屋「とらや」さんの羊羹。ご進物の大定番。
悪印象が付くので、金銭授受の際に同伴させるのはやめて頂きたい。

はじめに

2007年頃事件の前段

一色武氏が薩摩興業に加わった経緯

UR都市機構が請け負った千葉ニュータウン開発に伴う道路用地買収・建設を巡り、隣接する薩摩興業との間に補償問題が生じました。ここで薩摩興業は右翼団体らに300万円を支払い、交渉を依頼しましたが、大臣経験もある某元国会議員を介しても交渉はまとまりませんでした。これに激怒した薩摩興業は右翼団体らに1000万円を請求しましたが、右翼団体は支払いの代わりに交渉役として部下と一色氏を薩摩興業に遣わしました。

事件の沿革

2013年頃補償問題

薩摩興業とUR都市機構との間に補償問題が発生

UR都市機構の施工した千葉ニュータウン開発に伴う道路建設によって隣接する薩摩興業はこれまで度々被害を被っており、その後補償問題が生じましたが、両社の補償交渉は難航していました。

2013年5月9日相談

甘利氏事務所に相談

難航していたUR都市機構との補償交渉について、薩摩興業の一色武氏(総務担当者)はかねてより懇意にしていた甘利明氏を頼り、清島健一氏(甘利明大和事務所所長・公設第一秘書)から、UR都市機構側に内容証明を送ることを提案されました。

2013年6月7日面談

甘利氏政策秘書がURと面談

甘利氏事務所の宮下忠士氏(政策秘書)がUR都市機構本社に趣き、薩摩興業との補償問題について面談を行いました[5]

2013年8月補償問題決着

UR都市機構は補償金を支払い

清島氏の提案、UR側との面談により補償交渉は進展し、UR都市機構は薩摩興業に対して補償金として約2億2千万円を支払いました。

当初予定されていた補償金は2000万円でした[6]

2013年8月20日金銭授受

薩摩興業は甘利氏事務所に500万円を供与

薩摩興業は大和事務所にて、補償交渉のお礼のために500万円を手渡し、発行元を「自由民主党神奈川県第13選挙区支部」として400万円、100万円に分けた領収書を受け取りました。この時、政治資金収支報告書には300万円分が未記載でした

清島氏はこの300万円は一色氏に返却したと伝えていますが、一色氏は否定しています。

2013年8月下旬不正指示

領収書の書き換え

清島氏より、前述した100万円の領収書の発行元を「自民党神奈川県大和市第2支部」、日付を9月6日と書き換えたものと交換するよう依頼があり、一色氏はそれを受諾しました。

2013年11月14日金銭授受

甘利氏に礼金

一色氏は、甘利明氏本人に対しURとの補償交渉のお礼として、とらやの羊羹と共に現金50万円を議員会館大臣室で手渡しました。この時、事務所スタッフにも礼金として3万円を手渡しました。

2014年頃補償問題

薩摩興業とUR都市機構との間に新たな補償問題が発生

薩摩興業とUR都市機構の間に、地下埋没産業廃棄物処理について新たな補償問題が生じました。

UR都市機構の道路工事によって、薩摩興業敷地のコンクリートにひび割れが生じ、これを補修するにはコンクリートを一旦全て剥がす必要がありました。しかし、薩摩興業の敷地下には地主の父親が投棄した大量の産業廃棄物が埋まっており、覆っているコンクリートを剥がす際は、全ての廃棄物を処理する必要があり、その費用は100億円以上かかるとのことですが、UR都市機構が提示した補償金は1億3000万円でした。

2014年2月1日金銭授受

甘利氏に口利きを依頼

一色氏は、UR都市機構との補償交渉に対する口利きを依頼するために大和事務所に訪れ、そこで甘利氏に経緯説明後、現金50万円を甘利氏本人に直接手渡しました。

しかし、その後も補償交渉は進展しない中、甘利明事務所スタッフに対しての接待が続きました。

2014年4月12日交友

「桜を見る会」に招待

甘利氏は、安倍晋三総理主催の「桜を見る会」に一色氏を招待して記念写真を撮りました。

一緒に写真に写っているスギちゃんは、甘利氏の親戚の知り合いとのことです。

2014年9月25日国との交渉

環境省役人との面会

一色氏は清島氏・鈴木陵允氏(政策秘書)と共に議員会館で、環境省役人と産業廃棄物処理についての話し合いが行われました。

2014年10月~15年10月接待

UR都市機構職員も飲食接待

UR都市機構職員2人が、一色氏から約1年間に渡って複数回、総額約100万円の飲食接待を受けていました[7]

2014年11月20日金銭要求

清島氏より金銭提供の依頼

衆議院選挙を1ヶ月後に迎えたこの日、清島氏より金銭提供の依頼があり、薩摩興業と一色氏個人の名義でそれぞれ50万円ずつ、計100万円を寄付しました。この時、収支報告書には薩摩興業からの50万円のみ記載され、一色氏の50万円は「甘利明事務所(政治団体未届)」宛として処理されました。

2015年3月、7月金銭授受

清島氏より商品券提供の依頼

一色氏は清島氏から、国交省局長に対して5万円、国交省役人に対して30万円の商品券を口利きの依頼料として要請され、提供しました。しかし、国交省局長はこの5万円の受取を否定しています。

その後も、UR都市機構との新たな補償交渉についての会合は11回に及びますが[5]、状況は好転しないまま接待だけは続き、2015年だけで口利きの経費は210万円飲食費は160万円にまで上りました。

2015年10月19日金銭授受

ビザ申請目的で現金20万円を供与

一色氏は、大和市内喫茶店にて清島氏にビザ申請に対して便宜を図ってもらうため、清島氏、鈴木氏に10万円ずつ計20万円を手渡しました。この時、既に一色氏は週刊文春にこれまでの過程を告白しており、この場には週刊文春のカメラマンも同行していました。

2016年1月20日告発

週刊文春にて告発

UR都市機構との補償交渉が進まず、タカリ行為を繰り返され、不信感をつのらせた一色氏は、週刊文春に本件を告発し、「週刊文春 2016年1月28日号」誌面で公表されました。

事件発覚の後

2016年1月21日国会答弁

甘利氏が国会で一部報道を認める

甘利氏は薩摩興業との面会は認めましたが、「記憶が曖昧」として金銭授受については明言を避けました。また、秘書の口利き疑惑については知らなかったと答弁しました[8]

2016年1月28日引責辞任

甘利氏が内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)辞任を表明、自宅療養を発表

甘利氏は内閣府で記者会見を開き、薩摩興業から100万円を違法性のない寄付金として受け取ったことを認めるも、疑惑の責任を取り、内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)を辞任する意向を表明しました[9]。この時、本件について説明責任を果たすことを約束しました。
また、甘利氏は睡眠障害を患い、自宅療養を発表しました[10]

2016年2月16日口利きを否定

UR都市機構は口利き疑惑を否定

衆院予算委員会でUR都市機構の上西郁夫理事長は、薩摩興業との補償交渉について、清島氏、鈴木氏が関与していたことを認めましたが、補償金額を釣り上げるような口利きについては否定しました[11]

UR都市機構は、補助金制度の見直しによる影響を鑑みて、2013年度中に補償問題を解決出来るように急いでいたそうです[12]

2016年3月16日刑事告発

弁護士団体が甘利氏と清島氏を刑事告発

弁護士団体「社会文化法律センター」は、本件について甘利氏と清島氏にUR都市機構への違法な口利きをしたあっせん利得処罰法違反の疑いがあるとして刑事告発を行いました[13]

2016年4月8日刑事告発

市民団体が甘利氏と清島氏、鈴木氏を刑事告発

市民団体「政治資金オンブズマン」は、本件について甘利氏と清島氏、鈴木氏にあっせん利得処罰法違反政治資金規正法違反の疑いがあるとして刑事告発を行いました[14]

2016年4月8日~9日家宅捜索

UR都市機構、薩摩興業、一色氏自宅を捜査

東京地検特捜部は、UR都市機構本社、千葉業務部、薩摩興業、一色氏の自宅を捜査しました[15]

2016年5月31日不起訴処分

東京地検特捜部は甘利氏と清島氏、鈴木氏を不起訴処分

東京地検特捜部は、甘利氏と清島氏に対して嫌疑不十分のため、不起訴処分にしたと発表しました[16]

2016年6月6日活動再開

甘利氏が活動再開を表明

国会が閉会し、自身が不起訴処分となって数日後、甘利氏は4ヶ月間の睡眠障害から回復し活動を再開することを表明しましたが、説明責任を果たすという約束は果たされませんでした[17]

睡眠障害がここまでタイミングよく回復することは珍しいそうです[18]

2016年7月29日不起訴不当

東京第4検察審査会が清島氏と鈴木氏を不起訴不当と判断

東京地検特捜部が不起訴処分としていた清島氏、鈴木氏に対して、東京第4検察審査会は不起訴不当と発表しました[19]

2016年8月16日不起訴処分

東京地検特捜部は清島氏、鈴木氏を改めて不起訴処分

東京地検特捜部は清島氏、鈴木氏を改めて嫌疑不十分で不起訴処分としました[20]。これにより、2人が刑事責任を問われる可能性は無くなりました。

要点まとめ

  • 薩摩興業、一色氏から甘利氏側に費やした金額は実際は数千万円(確実な証拠が残っているのが1200万円)。
  • 甘利氏事務所がUR都市機構に接触した後、薩摩興業が受け取った補償金は約10倍にまで膨れ上がりました。
  • 本来は不法投棄者が責任を負うべき元の土地所有者らによる不法産業放棄物の処理費用約30億8000万円をUR都市機構は負担しました
  • 告発者本人が金銭授受を伴う「口利き」を依頼したと確かな証拠と共に証言しても、あっせん利得処罰法に処されることはありませんでした。
  • 週刊文春の告発記事は、UR都市機構から薩摩興業に対して具体的な補償金が提示される矢先のことでした(補償交渉はまとまりかけていた?)。
  • 薩摩興業は今回の一色氏の告発には関与しておらず、現在は関係性は切れています。

※ 一色氏はここにも別の自民党議員の関与を匂わせる発現をしています[21]

編集後記

2016年1月に発覚したUR都市機構と薩摩興業との補償交渉に関連した甘利氏事務所の口利き関与疑惑についてまとめてみました。調べれば調べるほど、登場人物全員がいぶかしさを醸し出しています。一色氏も決して政治家事務所の不祥事を告発した正義の味方とは到底言えず、補償交渉がうまくまとまらず、多額のタカリ行為を繰り返された腹いせで行っただけのようです。UR都市機構自体も、土地買収の管理不足や不備、過度な補償金の支払い、職員が多額の接待を受けるなど、事件に対して我関せずとは言えないでしょう。
甘利氏自身は本件に直接は関与していないようですが、事務所秘書の方々についても全くお咎め無しで事が収まるとは、将来に対し悪しき前例が残る結果となりました。
消えてしまった300万円はどこに行ってしまったのか。その後、不法投棄処理に関する補償金はどのように処理されたのか。またわかったことがあれば追記して参ります。

参考

週刊文春 2016年1月28日号

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編者文藝春秋
発売日2016年1月21日
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政界激震スクープ TPP立役者に重大疑惑 「甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した」実名告発 口利きの見返りに大臣室で現金授受。現場写真 音声 公開!週刊文春2016年1月28日号 | バックナンバー – 週刊文春WEB

週刊文春 2016年2月4日号

形式週刊誌
編者文藝春秋
発売日2016年1月28日
出版社文藝春秋
価格400円

購入先

甘利大臣事務所の嘘と「告発」の理由
「私が甘利大臣に百万円手渡したのは紛れもない事実です。当時のメモ、音声など、決定的な証拠はすべて揃っています。私は甘利家と古い縁があり、総理の観桜会にも招待されました。今回の告発について、私の背景を怪しむ声も耳にします。ならば決断に至った真相を包み隠さずお話ししましょう」週刊文春2016年2月4日号 | バックナンバー – 週刊文春WEB

週刊新潮 2016年2月4日号

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発売日2016年1月28日
出版社新潮社
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マッチとヒガシが笛吹けども踊らず!
まるでお通夜だったSMAP「戦犯4人」の謝罪セレモニー
――1月21日午後10時半……、東麻布の高級中華を借り切って設けられたSMAPによる同僚タレントたちへの謝罪の場。予想通り、冒頭から最後まで重苦しい雰囲気に包まれた。むろん、SMAP内部の亀裂も一朝一夕に修復できるはずもない。キムタク以外が皆、怖れているのは、9月以降、緩慢に進行する露出低下だ。週刊新潮 | 新潮社

脚注


引用

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